【行政書士】法律による行政の原理の意義をできるだけわかりやすく【行政法】

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法律による行政の原理の意義をできるだけわかりやすく
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悩める受験生

『法律による行政の原理』って、
抽象的でわかりにくいです…。

わかりやすく説明してもらえませんか?

ヱビス

この辺は、行政法の中でも抽象的で難しいところですからね…。

うーん、何とかかみ砕いて説明してみましょう。

私も行政法は苦手でしたからね💦

大学の授業は最初と最後しか出ませんでしたし…。

悩める受験生

えー?!

大丈夫なんですか?

先生が合格したのって、確か青島幸男が都知事のときだって言ってましたよね?

ヱビス

ええ、確かに、はるか昔の話です…

取り合えず、頑張って解説します。

法律による行政の原理は、行政法を勉強すると最初の方の行政法理論で学習することが多いと思います。

ところが、民法総則と同じで、行政法理論は行政法の中で最も抽象的で分かりにくいところです。

行政法とは、国民代表である議会が法律を定め、官僚が行使する行政権をコントロールし、行政権の恣意を防止し、国民の人権を保護する行政統御システムです。

行政法は、専制君主国家から法治国家が生まれ、そこで成立した法律による行政の原理とともに生まれました。

法律による行政の原理と行政法は密接な関係をもっています。

行政法を理解するには、法律による行政の原理を理解することが大切になってきます。

目次

筆者のプロフィール

はじめまして、当ブログ管理人のエビスと申します。

私は、とある地方都市で運送業許認可専門の行政書士事務所を経営しています。

早稲田大学法学部を卒業し、旧司法試験を受けていました(択一合格あり)。

大学での専攻は民法の債権法の中の契約法でした。

司法浪人中に、法学部卒とはいえ、現在よりも一般知識の比重が高く論文もあった時代に、2ヶ月程の勉強で合格したので、記事にはある程度の信ぴょう性はあるかと思います。

法律による行政の原理の意義:法律による行政の原理とは?

法律による行政の原理の意義:法律による行政の原理とは?

 法律による行政の原理とは、行政作用を法の拘束下におき、行政を法によってコントロールすることです。

簡単に言うと、行政が何かするときは、国民の代表が決めた法律に従わなければいけないということです。

もともと行政法は行政権の乱用から国民の自由、権利、財産などを守るという、自由主義的側面が非常に強いものでした。

しかし、現代の行政国家現象のもとにおいては、行政権の乱用から国民の権利を守るという消極的な機能だけでなく、行政のサービスを法律に従って実行させようとする積極的な機能も重要になってきました。

こうして見てきますと、法律による行政の原理は、国民代表である議会が法律を定め、その法律によって官僚の行う行政活動をコントロールしていくことが重要なのです。

法律による行政の原理の3つの原則

法律による行政の原理の意義:法律による行政の原理とは?

法律による行政の原理には、以下の3つの原則があります。

①法律優位の原則

②法律の留保の原則

③法律の専権的補機創造力

①法律優位の原則

法律優位の原則とは、行政活動は現に存在している法律に反してはならないという原則です。

例えば、現在、消費税は10%(一部は8%)ですが、政府が「財政が苦しいので、来月から15%に引き上げます」ということはできません。

消費税率を引き上げるには、その根拠となる法律の制定が必要となります。

日本では、憲法ではっきりと三権分立が制定されており、国民は法律優位の原則はある意味当然だと思っている節があります。

この原則は、行政活動の性質を問わず、適用されるものです。

②法律の留保の原則

法律の留保の原則とは、法律の根拠がなければ行政活動をしてはならないという原則です。

言いかえると、行政活動をするには必ず法律の根拠が必要になるという原則です。

例えば、「独身者は将来の労働力を生み出さず、子供にお金がかからないので、収入の20%を独身税として徴収する」という法律は現在のところありません。

しかし、「このような税金を取ってはいけない」という法律もありません。

ということは、上のような独身税を定めることは、現に存在する法律に違反しません。

①の法律優位の原則だけでは、このような政府の横暴を防げません。

ところが、独身税の根拠となる法律は今のところないので、法律の留保の原則に違反することになります。

これが、法律の留保の原則の効果です。

もちろん、独身税は憲法14条(平等原則)や憲法84条(租税法律主義)に違反する可能性はあります。

法律の留保の原則は、法律の根拠が必要となる範囲に関して主に以下の3つの学説があります。

(ⅰ)侵害留保説

侵害留保説は、行政活動のうち、国民の自由・財産を侵害する侵害行政のみが法律の留保の範囲内である(法律の根拠が必要)であるという説です。

(ⅱ)全部留保説
全部留保説は、すべての行政活動に法律の根拠が必要であるとする説です。


(ⅲ)権力留保説

権力留保説は、行政活動のうち権力的なものについてのみ、法律の根拠が必要だと考える説です。

侵害留保説がもっとも行政権の留保される範囲が狭く、全部留保説がもっとも広くなります。
権力留保説はその中間ですね。

判例・実務は侵害留保説をとっています。

そりゃ、官僚たちは自分たちの行政活動はなるべく自由にやりたいと思っていますから、当然、行政庁ではこの説で動きます。

侵害留保説の理由づけてとしては、国民の自由・財産を侵害する行政活動(侵害行政)は、国民に不利益が発生するのだから法律の根拠が必要なのは、当然だ。

しかし、生活補助や補助金などのように国民に利益を与える(給付行政)場合、別に国民は不利益を被るわけじゃないから法律の根拠なんか必要ないでしょ、という考え方です。

しかし、これには学者から批判が多いです。

この説は、侵害留保説は行政権が立法権から独立した権限を持っていて、行政活動の自由があることを前提にしています。

そして、国民の権利が侵害される場合だけ、例外的・限定的に行政活動が制約されるとします。

これは、古の立憲君主制の時代の考え方です。

現在の、国民主権のもとでは行政活動は議会すなわち国民の意思に基づくと考えるべきです。

残りの2説は、行政活動にはもともと法律による制限、つまり行政権には限界があることを前提にするものです。

最も極端なのは全部留保説ですが、現在の行政国家現象における行政の役割に即して見た場合、この説は取りえません。

なぜなら、国民の権利を守るために緊急を要することにまで法律の根拠が必要とされるのでは、機動的な行政活動は出来ないからです。

例えば、緊急の災害時など、人命がかかっている時に、国会の法律の制定など待っていられませんよね。

むしろ、このような場合は法律の定めがなくとも、積極的に行政活動を行っていかなければ、行政の責任が果たせません。

現在、学者の中で有力なのは権利留保説で、侵害行政か給付行政かを問わず、形式的に公権力の行使としてなされる行政活動には法律の根拠が必要だとする説です。

法律の根拠が必要な範囲については、侵害留保説と全部留保説の中間といった位置づけです。

権利留保説では、行政指導には法律の根拠は不要です。

③法律の専権的法規創造力

法律の専権的法規創造力とは、法律を創るのは立法権の専権であって、行政権が法律を創るには法律による授権がなければならないということです。

根拠としては、憲法41条があげられます。

逆に言うと、法律による授権さえあれば、行政権も立法行為が行えることになります。

立法権の法律創造力を最大限尊重すると、行政権は法律の規定と無関係な命令(独立命令)を制定することは許されません。

そうすると行政権は、せいぜい法律の規定を補充する委任命令と法律の処罰を定める執行命令の制定位しかできないことになります。

しかし、社会が複雑になり、行政活動にも専門性が必要になってきます。

すると、立法権にはその専門性に対応した法律を創ることはほぼ不可能です。

だって、居眠りしていても恥ずかしげもなく、多額の議員報酬をもらっちゃう人たちにそんな専門性を求められませんよね。

そうすると、行政権がその専門性に基づき、多くの独立命令を制定することになり、実質的に立法作用を営むことになります。

現在では、唯一の立法機関としての国会の立法権はいささか理想論にすぎず、行政の肥大化とともに空洞化してしまっています。

これが、現在の日本の立法権と行政権の関係です。

法律による行政の原理の3つのメリット

法律による行政の原理のメリットは以下の3つです。

①行政側は、国民代表の議会が定めた法律に従い執行することで、民主的正当性を裏付けることが出来る。

②国民の代表によって定められた法律は、国民の権利と義務に関する一般的なルールなので、行政は国民に対し公平・平等に執行しなくてはならなくなる。

③国民は、行政に対する予測可能性と法的安定性を確保できる。

①について

①の民主的正当性が少し難しいかもしれませんね。

かみ砕いてい言うとこんな感じです。

官僚:「私のやっていることはきちんと法律に則ってますよ。

法律はあなたたち国民が、選挙で選んだ代表が決めたものですよね?

ですから、私のやっていることはあなたたち国民の意思に沿っているのですよ(建前だけどね)。

だから文句ないですよね?」というお墨付きをもらえるということです。

これは、行政側からのメリットですね。

行政が国民に法律を執行しようとするとき、国民に「法律執行の根拠は?」と言われれば「あなたたちの代表である国会が決めた法律にこうあるから執行するんですよ」と言えるわけです。

官僚

ちゃんと法律に則って行政活動してまーす!

②について

②の行政は国民に対し公平・平等に執行するべきという建前を、難しい言葉で「法律の一般規範性」などといいます。

法律は、その国の国民になら誰にでも平等に適用されなければおかしいですよね。

つまり、ある特定の人にだけ適用される法律や、特定の地方だけに適用される法律は、本来違憲の疑いが強いです。

このように、法律の一般規範性は行政の理不尽な法律の執行から個人の人権を守る役割があります。

③について

③は、法が国民の権利義務に関する一般的なルールという形をとることによって、国民はどんな行動を取れば罰せられるかが予めわかります。

また、法律はある程度の普遍性を持つことから、その解釈・適用が一義的なので、役所の担当者や裁判官が代わっても同じように適用されるということです。

このことを法的安定性と言います。

法的安定性には、一定期間、変更されることがないことも含まれます。

ただ、法的安定性を重視しすぎると具体的妥当性が犠牲になるということに注意してください。

法的安定性と具体的妥当性はどちらが正しいとかではなく、「どちらを重視するのがより妥当な結果を導けるか」という問題なのです。

このように、法律は一般規範性を持つのが原則ですが、実際には、法律の形をとりながらも個別具体的な措置が定められることがあります。

これを、措置法あるいは処分法などと呼びます。

国会が個別具体的な行政措置を法律の形式で定めるのは本来違憲です。

なぜなら、国会が制定する法律は、一般規範性を持たなければならないからです。

つまり、国会が法律でその適用まで事細かに制定することは、実質、国会が行政作用を営むことになるからです。

これでは、三権分立の意味がなくなってしまいますよね。

そこで、特別に必要がある場合に限り例外的に認めるべきといわれています。

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